世界湿地の日「2月2日」は、ラムサール条約が締結された日を記念して1996年に制定された国際的な記念日です。世界中の人々に湿地への関心を持ってもらい、その大切さを知ってもらうことを目的にラムサール条約事務局が制定しました。
「湿地」と聞くと湿原や湖沼を想像し、特に都市部に暮らす人にとってはあまり生活と直結しないため自分事として捉えにくいかもしれません。しかし、実は湿地に該当する地形には、意外なものも含まれています。今回はラムサール条約の概要のほか、身近な湿地と環境を守るためにできることを考えてみましょう。
1. ラムサール条約とは?
正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。1971年2月2日に、イランのラムサールという都市で開かれた国際会議で採択されました。現在、172の国と地域が締約しており、締約国それぞれが自国における国際的に重要な湿地を1ヵ所以上指定し、事務局に登録しています。各国がそこに生息・生育する動植物の保全を図るため、取るべき措置などが条約で定められています。
2. 生物多様性と湿地
湿地は「生物多様性の宝庫」。世界の生物種の約40%が生息しているともいわれています。渡り鳥の渡来地としても重要であり、国境を越えて移動することから国際的な協力も必要であるため、共通した約束事が定められています。また、湿地を埋め立てた場所では災害の際の被害が大きくなるという研究結果もあり、防災の観点においても重要な場所といえます。
3. 身近にある湿地
湿地の定義は「水を含んだ土地」「水に覆われた土地」であること。これは、人工のものであっても構わないとされています。水が流れているところでも、とどまっているところでも、一時的に干上がるところでも該当。さらに、淡水でも海水でも、それが混ざり合った汽水でも該当します。 くわえて「低潮時における水深が6メートルを超えない海域を含む」という条件も。潮が引いたときの水深が6m未満である海も湿地に該当するとされていることは意外に感じるのではないでしょうか。 なお、人工の湿地に該当するものはダム湖、ため池、水田など。これらは人間の社会生活に必要なものであると同時に、特有の生態系が生まれやすい環境です。
4. 湿地保全
世界の湿地は経済の発展とともに、埋め立てなどにより失われつつあります。環境省のデータによると、特にアジア・ヨーロッパでの減少が著しく、1970年を基準とすると湿地面積が半分以下になっています。現在では研究が進み湿地保全の科学的根拠が示され、世間の環境意識の高まりによってラムサール条約のような湿地を保護する国際的な機運もありますが、わたしたち個人が「知ること」が何より大切な第一歩です。湿地の動植物や景色などに興味が湧いたら、ぜひ湿地に出掛けたり、観察会や環境教室といったイベントに参加したりしてみてください。「川辺や海辺でのレジャーでごみのポイ捨てをしない」ことも立派な湿地保全の行動のひとつ。小さな積み重ねが身の回りの環境を守ることにつながります。